国内で飼育されていた唯一の雄ラッコのリロ(マリンワールド海の中道提供)
福岡市東区の水族館「マリンワールド海の中道」は4日、国内で飼育されていた唯一の雄のラッコ「リロ」(17歳)が死んだと発表した。昨年11月下旬から体調に変化がみられ、昨年末から治療に専念していた。マリンワールドでは平成元年から続いていたラッコの展示が途絶え、国内で飼育中のラッコは三重県鳥羽市の鳥羽水族館の雌2頭のみとなった。
マリンワールドによると、昨年11月下旬、リロは毛の一部に手入れが行き届いていない状況がみられた。ラッコは、極寒の海中で体温の保つために毛の手入れを欠かさず、飼育下では毛の状態をみて体調を判断しているという。注意深く状態を観察していたが、動きは活発で、クリスマスのナイトショーでもお客さんを楽しませていた。昨年12月27日朝、えさを全く食べなかったため、一般展示を中止、療養に専念することとなった。
ラッコプール前に献花台
療養中はえさを食べるようになったが、元日から体調が悪化し、規定量を食べられなくなったという。プールから自力で上がれないほど体力の低下が目立つようになり、飼育員がつきっきりで看病にあたる中、4日午前7時18分に息を引き取ったという。マリンワールドでは、ラッコプールの前に献花台を設置し、リロを追悼する。
雄のラッコは20歳を超える個体がほとんどなく、マリンワールドの担当者は「リロは人間でいうと70、80歳くらい」と話す。リロは19年に和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドで生まれ、24年にマリンワールドにやってきた。令和3年に死んだマナとつがいとなり、仲睦まじい姿は来場者を和ませてきた。
国内で飼育されていた唯一の雄ラッコのリロ(マリンワールド海の中道提供)
日本国内では過去多い時で120頭を超えるラッコが全国の水族館や動物園などで飼育されていたという。ほとんどが米国のアラスカ生まれで、一部はロシアから輸入されていた。その後、各国が輸出規制をとるようになり、繁殖以外に頭数を維持する方法がなくなった。各地の水族館が繁殖に取り組んだが、世代を重ねるごとに繁殖力が落ちていき、原因については解明されていないという。国内で飼育中のラッコは鳥羽水族館の雌2頭のみで、パートナーになれる雄はいなくなった。(高木克聡)
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