「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺」に主演する横浜流星(寺河内美奈撮影)
「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺」NHK総合 日曜午後8時
NHK初出演作品が大河ドラマで、しかも主演。
「なぜ自分を選んでいただけたのか、今も疑問」と笑わせるが、特別なプレッシャーはない。
過去には、ボクサー役のため体重を1カ月で10キロ増やし、プロのライセンスまで取得したことも。また、水墨画がテーマの主演映画では、撮影前に水墨画を1年以上学ぶなど、役作りに全力で取り組んできた。
そして今年、1年を通じ演じるのは「江戸の出版王」として喜多川歌麿ら浮世絵師や、戯作者の滝沢馬琴といった才能を見いだし、世に送った蔦屋重三郎(1750~97年)。戦国時代や幕末など激動の歴史を扱うことが多い大河としては異例の、天下泰平の江戸中期。そんな時代を背景に、花開いた江戸文化を支えた出版人だ。
「いい意味で、大河ドラマらしくない。(大河の)スケール感はあるが、派手な戦(いくさ)がないからこそ、〝商いの戦〟になっている。ビジネスストーリーというか、喜劇というか…」
江戸・吉原に生まれ、親も金も画才もなかった〝蔦重〟が、ハンディをものともせず時代の先を読み、メディアの寵児となっていくサクセスストーリー。その原動力となるのが、血脈に頼らず周囲を巻き込む人間力と、底抜けの明るさだ。
「彼の一番の魅力は、自分だけではなく、誰かのために頑張れること。そういう人間は強く、協力を得られると何倍もの力を生む」
素顔は空手有段者だが、ドラマ前半は差別され、殴られ放題という、〝大河史上最弱〟の主人公。それでも周囲のため愚直に行動し続ける蔦重に、「こんな人間でありたい」と憧れを抱く。実は取材時、骨折中だった記者を気遣う振る舞いも自然で、令和の蔦重がそこにいた。(飯塚友子)
横浜流星
よこはま・りゅうせい 平成8年、神奈川県出身。雑誌モデルを経て26年、特撮番組「烈車戦隊トッキュウジャー」で注目される。令和2年、映画「愛唄-約束のナクヒト-」などで第43回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。特技の極真空手は初段。
あらすじ
江戸中期の吉原で、貸本屋から身を興し、「江戸のメディア王」として時代の寵児となった〝蔦重〟こと蔦屋重三郎(横浜流星)。時の権力者、田沼意次(渡辺謙)がつくり出した自由な空気の中、江戸文化が花開いた時代に蔦重は平賀源内(安田顕)らと交流。さらには書籍の編集・出版業を始め、「黄表紙」という挿絵を多数使った書籍でヒット作を連発。喜多川歌麿や葛飾北斎、東洲斎写楽、滝沢馬琴らの才能を見いだす。